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オバマ一家の「選択」? [超大国アメリカの経済社会]

2008年のアメリカ大統領選は、アメリカの建国233年の歴史を大きく変えるものとなりました。"Change is coming"は単なる繰り返しの「掛け声」でなく、まさに「現実」のものとなりました。

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今、Obama一家にとって重要なのは、ホワイトハウスで飼う犬の種類と、2人の娘の転校先であると、日本でも報じられています。犬はともかく、転校先がアメリカで話題となるのは、いくつかのアメリカ的な背景があるからです。アメリカの初等中等教育サービスは「学校区」(school district)と呼ばれる地方自治体ごとに地方分権的に運営されているため、どの「学校区」を選択するかが両親(学校区の納税者)や学ぶ本人にとって重要となっています。学校区ごとの分権型の教育システムは、明確な格差を生み出す制度でもあるため、1970年代以後州から学校区に補助金を大規模に交付するようになりましたが、富裕な学校区は青天井に財源を確保することが可能であるため、州補助金の格差是正効果には限界があるのが現状です。

オバマ大統領は民主党です。民主党はこうした州・地方レベルでの教育財源の格差を重大なアメリカの国家的課題として掲げてきた政党です。貧困層が多い学校区には手厚く連邦補助金を交付することを支持してきました。それだけにObama一家が、どの「学校区」を選択するかが注目されているという訳です。

ワシントン郊外には幾つかの富裕な学校区がありますが、特にメリーランド州にあるBethesdaが代表例です。大統領ファミリーと言えど、どこかの州の「学校区」を選択しなくてはなりません。さて、 Obama一家は、どの「学校区」を選択するのでしょうか?
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オバマ政権と金融改革 [超大国アメリカの経済社会]

アメリカ経済は、サブプライムローンに端を発する一連の金融危機とそれへの緊急経済安定化策としての大規模な公的資金投入による不良債権の買い取りを見ていると、単にアメリカの自由経済の無法ぶりを批判する論調がEUを中心に支配的になっています。しかしアメリカの資本市場、証券市場が20世紀を通じて、いかにグローバルな信用と魅力を保ち続け、強固なファンダメンタルズを確保していたかという側面がもう少し論じられても良いと思います。

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現在、金融サミットでは、IMF等によるグローバルな資金規制が導入される方向で議論されていますが、その改革をアメリカがどの程度受け入れる用意があるかについては、今回の金融サミットでのアメリカ(ブッシュ政権)の姿勢からは、未知数のようです。それもそのはずで、いまアメリカ連邦議会では、公的資金注入の実質的なアクションプランに移っているため、IMFの資金規制改革よりも、不良債権の値付けをどのように行うかが、最大の論点になり続けているからです。公的資金を投入する以上は、納税者にワラントを発行して権利保証すべきだとする意見が経済学者から出ているのです。

プリンストン大学のPaul Krugman教授(今年のノーベル経済学賞受賞者)はリベラル派の経済学者で広く知られ、次期オバマ民主党政権のブレインになることが有力視されていますが、とりわけ彼の主張は、納税者へのワラント発行による権利保証すべきであるというものです。(The New York Timesのコラム、米PBSでのコメント)。来年1月20日に、オバマ次期大統領による大統領就任演説があります。おそらくオバマ大統領はその就任演説の場で、2年にわたる公的資金投入と納税者の権利保証について何らかの言及があるはずです。注目したいところです。

アメリカ最大の軍需産業の街、El Segundoへ [超大国アメリカの経済社会]

私は学部から大学院にかけて一貫してアメリカの経済や財政の研究に携わってきました。そのなかで関心を寄せてきた分野の一つが、アメリカ経済の心臓部ともいうべき軍需産業(military industry)です。9月にニューヨークとロサンゼルスに出張に行く機会があったのですが、ロサンゼルスに行った際に、ロス空港から南へ30分ほど行ったところにあるアメリカ最大の軍需産業の町、El Segundoに立ち寄りました。

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El Segundoカウンティ内の軍需企業を3社ほど訪問しましたが、当然ながら、どの企業も厳重体制で、1社だけ、プラント内を見せていただきました。それは、アメリカの最新鋭戦闘機F-22Rapterの空気取入れ口を専門に製造する企業です。次期オバマ民主党政権における軍事支出(研究開発費を含む)は、これまでの共和党政権に比べれば抑制されるとの公算が高いですが、しかし軍需から民需への技術移転・波及効果は絶大であることは歴史が証明してます。インターネットは、その民需移転の典型例であることは有名な話です。その恩恵により、eラーニングも可能になっています。

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歴史的に見て軍需産業は20世紀のアメリカ経済の繁栄を支える花形産業であり続けただけに、単純な発想での軍事支出削減は、アメリカ経済の発展の次なる局面で競争力を削ぎ落としかねません。また、90年代クリントン政権は軍事支出を削減し、支出全体の10%を切る年度もありましたが、オバマ次期大統領ではどのようになるのでしょうか?歴代の民主党政権が得意としてきた「内政」ではなく、「外政」に関わる軍事支出をオバマ氏はどのように認識しているのか、彼の今後の連邦議会内でのリーダーシップが注目されている所以です。

コロンビア大学 [超大国アメリカの経済社会]

ニューヨークのマンハッタンにある名門、コロンビア大学。

 資料をもらいに経済学部に行きました。アメリカの大学は地域社会への知の還元を主たるミッションとして今日まで発展してますが、財界、産業界の側も大学に多額の寄付金を供し、相互の利益を得てきました。

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 私は学部生のとき以来ずっと、アメリカにおける大学と地域社会との密接な関係に強い関心を持っていますが、今回のコロンビア大学に立ち寄った時も改めてアメリカの大学の存在感を実に強く感じました。

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 そうしたアメリカの大学の在り方を象徴するのが、大学図書館です。 まさに「知と富の結晶」といった感じです。

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 皮肉なことに、いま大騒ぎになっているマンハッタン(Wall Street)を震源地とする世界金融不安の広がりも、「金融工学」という大学が生み出した英知によるものです。
 これを解決するのも大学、といったところでしょうか。

映画「Beautiful Mind」の舞台へ [超大国アメリカの経済社会]

今、ニューヨークに出張に来ています。アポイントメントの連続で移動に忙しい毎日ですが、マンハッタン内は交通の便が良いので助かります。主な訪問先はニューヨークの都市交通公社MTAで、その財政部局の方とのディスカッション、それから机上の空論に陥らないためのフィールドワークとして、地下鉄の資本改善計画(英語で一般にCIPと呼びます)を視察に行っています。そのほか、ニューヨーク市役所の財政部局や住宅公社、そして今日はニューヨーク市立大学、ニューヨーク大学、そして名門のプリンストン大学の経済学部に行きました。

ニューヨークからニュージャージ交通公社(NJ Transit)に乗って1時間半ほどでプリンストン大学に着きますが、さすがに大都市ニューヨークから1時間以上離れると、緑豊かな自然が広がります。ちなみにプリンストン大学は、映画『Beautiful Mind』の舞台でも知られています。これは、数学者であり、経済学者であるJohn Nash博士(1994年ノーベル経済学賞受賞)の人生を映画化したものです。キャンパス内を歩いた時、映画に使われた建物が目に入り、感動です。下の写真はその一つです。さて、どの場面に使われているでしょう?
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雨のニューヨーク、市役所 [超大国アメリカの経済社会]

ニューヨークに出張しております。今日は土曜日だったので役所や公社などのアポイントメントは一切なく、少し市内を回ることができました。今日はバスでの移動が中心でした。もっとも、そのバスなどの公共交通の研究調査で出張に来ているので、フィールドワークも兼ねてます。地下鉄やバスに乗ると、車窓を楽しむというよりも、どのような人が乗ってくるのか、または、乗車区間はどれくらいか等々、ついつい仕事の問題意識に集中してしまっていました。

午後3時位でしょうか、急に雷とどしゃぶりの雨が降り出し、市役所近くのカフェで雨宿りしましたが、結局、雨はやまず。路上で4ドルの傘を買って(折りたたみの傘は日本から持参していたのですが)、帰りました。写真はその時のニューヨーク市役所(11階に財政局があります)、右に少し見えるのは昨年も訪問した教育局です。
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でも今日はなかなか良いデジカメ画像が撮れました。アメリカ経済や財政システムの重要な側面を映し出す良い資料になります。写真は、精査しながら講義で活用する予定ですので、お楽しみに。

2012年アメリカ大統領選(2) レーガン空港から [超大国アメリカの経済社会]

「オバマ圧勝」に終わった2012年アメリカ大統領選。今後4年間、民主党政権の続投が決まったが、依然としてアメリカの外政、内政ともに課題山積で、上下院のねじれ問題はおろか、オバマ政権が1期目に最大限注力した公的医療保険制度が無事に実施されるかという最大の内政問題が注目されている。

一方、朗報もある。シェールガスをはじめアメリカのエネルギー国内生産体制への期待が昨年から一気に高まっており、もしそれが現実のものとなればエネルギー資源の供給体制の世界的再編が起き、それにともなって中東諸国を中心とする原油をめぐる国際情勢の構造変動をも引き起こすと予想される。事実オバマ大統領は昨日、テキサスを訪問して、こうしたエネルギー資源開発への期待の高まりをアピールしている。これはアメリカ製造業の再生、とくに南部諸州の経済成長にとって朗報となろう。

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年明け1月21日(通常20日ですが今回は21日です)、ワシントンDC連邦議会前では大統領就任演説が開催される。おそらく、この就任演説でも「アメリカの本格的再生、とくにエネルギー資源開発を通じた製造業の再生と雇用創出」が強調されると思われる。

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そんな予想や連想をしながら、ワシントンDCのレーガン空港で撮った写真を引っ張り出した。

2012年アメリカ大統領選」(1) オハイオ州クリーブランドの証言 [超大国アメリカの経済社会]

 2012年アメリカ大統領選もようやくフロリダ州の結果が明らかになり、民主党332人、共和党206人という最終結果で幕を閉じた。民主党オバマ大統領の「圧勝」であった。

 私は、ちょうどこの2012年選挙の直前、両党の候補者指名受託演説が開催されていた8月下旬から9月上旬にかけて、激戦州の一つオハイオ州に出張する機会を得た。クリーブランド市やコロンバス市に数日間滞在した。その中で、クリーブランド市滞在中に貴重な証言を得ることができた。それは、今思えば「オバマ圧勝」を鋭く察するものであった。

 私はその日、クリーブランド市ダウンタウン地区を流れる川に架かる古い鉄橋の管理人と話すことができた。その鉄橋管理人とは、オハイオ生まれ、オハイオ育ちの60代後半の白人男性である。

 白人男性いわく、「製造業に長く依存してきたオハイオ経済、とくにクリーブランドの地域経済はグローバル化の進展よって悉く衰退した。とくに鉄鋼業は衰退の一途だよ。オハイオ州には製造業に就こうという若者は自分の息子を含めて激減したよ(笑)」 と。その男性の息子さんは現在、アメリカ空軍に勤務しているという。
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 その白人男性は、昔から基本的に共和党支持者。ということは当然ロムニー候補に票を投じるのかと思われた。しかし、クリーブランドで働く人間の心境は、そう単純ではないということがわかった。

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その男性いわく、「民主党オバマ大統領は、本気でアメリカの製造業の競争力を強化して雇用を生み出そうとしている。隣のミシガン州の自動車産業への救済措置で、それを強く悟った。だから自動車産業と同様、鉄鋼業もある程度は救済措置を打つはずだ。2008年選挙は共和党(マケイン)に投票したが、2012年選挙は民主党(オバマ)に投票するつもりだ。」 と。
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中西部オハイオ州クリーブランド市の鉄橋管理者の証言は興味深いものがあった。今回2012年選挙の激戦州オハイオ州でのオバマ勝利は、こうした悩める共和党支持者の苦悩の選択、まさにswing votersの存在が大きかったようである。

アメリカ南部をいく [超大国アメリカの経済社会]

さて前回は、ミシシッピ州ジャクソン市役所を訪問しましたが、今回はミシシッピ州の州議会議事堂(State Capitol)を訪問してみましょう。この日も晴天です。

市役所を後にして、ほんの5~6ブロック離れた所にミシシッピ州議会議事堂があります。
議事堂の敷地内にある訪問者用駐車場にレンタカーを停めて、さっそく議事堂周辺を歩くことにしましょう。

見えました、これがミシシッピ州議会議事堂です。
この写真は、州上院本会議場サイドから撮っています。
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角度を変えて写真をもう一つ。。。(プロのカメラマンでも何でもありませんが・・・)
首都ワシントンにある連邦議会議事堂によく似たデザインです。
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明日は、いよいよ研究目的の一つ、州下院教育労働委員会のセッションがあります。そのセッションを傍聴したいと思います。

次回をお楽しみに。

アメリカ南部をいく [超大国アメリカの経済社会]

ミシシッピ州の州都、ジャクソン市に着きました。
ニューオリンズ国際空港から車で3時間半で到着。 途中で休憩を入れたものの、成田からの17時間のフライトの後だけに疲労を隠せません。 でも、「インターステイト55号」を降りてジャクソン市内に入ると、不思議と疲労が薄れました。ホテルにチェックイン後、まだ午後3時だったので、市内を回ることにします。

アメリカの都市を訪問して、いつも最初に行く所は、役所と大学です。
まずジャクソン市役所へ行くことにしました。
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「アメリカ南部」は、奴隷制という歴史を有します。それは綿花やタバコなどプランテーション農業だけでなく、土木・建築などの領域にも及んでいました。例えば、このジャクソン市庁舎も当時、多くの奴隷によって建設されたものです。

確かに、市庁舎のメインエントランスに掲げられている案内ボードには、
「本庁舎は1846年から47年にかけて奴隷の労働力により手製レンガで建設された」とあります。
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また南北戦争時には、 「本庁舎は、南軍(Confederate)、北軍(Union)を問わず負傷した兵士を救護する病院として活用された」 ともあります。北軍による3度目にわたるジャクソン市への攻撃、放火、占領によって市は壊滅しました。 建物の多くが煙突(Chimney)だけを残しているその無残な姿から、「煙突の町」(chimneyville)のニックネームが付けられました。

幸いこのジャクソン市庁舎は、3度の戦禍から逃れることができました。逃れたのは、州知事公邸、州議会議事堂、そして市庁舎だけでした。今日では、19世紀中庸に建築された「歴史の証言者」として市が大切に保存していて、市議会の議場として活用されています。
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