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ニューヨーク公民協働と教育政策 [教育政策と人的資源]

2月27日から研究調査でニューヨークに来ています。

今回の調査研究テーマは、「アメリカ大都市学校区の債券発行と証券市場との関係」ですが、その基礎的な調査として、ニューヨーク市内の公立学校での資本改善事業計画(Capital Improvement Projects)の実施状況調査、ヒアリングです。この他にも、学校区の財務部での資料収集もあります。


今回の調査対象の一つ、セントラル・パーク・イースト公立学校の様子。
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アメリカの地方財政、とくに教育財政は学校区ごとの地方分権的な仕組みをベースとしているので、学校区の自立と自律には目を見張るものがあります。学校区の財務部の担当者はみな、専門的な知識と責任を積極的にテイクしようとする姿勢があります。

ですから、ディスカッションすると必ず最後に担当者は個人の意見を熱心に語ります。そしてその専門的な知識を納税者に平易に説明し、資本事業計画や債券発行の決議(resolution)に導く努力をします。


ところが、自立と自律の志しとは無関係に、経済不況や財政難が襲ってきます。人間は、様々なクライシスに対して専門知識と経験をもって対処しますが、しかし人間の知識や経験だけではグローバル化した経済不況に伴う財政難を食い止めるのは容易ではありません。

そこで、学校区は自主財源以外に外部から財源を調達します。債券発行は、その主要な手段となっていますが、しかしこの証券市場こそ誠にグルーバル化した存在であって、一連のサブプライムローン問題では、基金を州に預けて運用を行っていた学校区が州の判断によって資金凍結にあい教員給与が支払えないという事態が起きました。

この時は、学校区は急遽、地元の地域金融から借入れて教員給与を支払ったとの報告書を読みました。それ以後、学校区は疑心暗鬼になっています。ここNYはそうしたサブプライムローン問題の震源地であったゆえに、新たな対応策も実践されています。

それが、NPO等と公立学校との「公民パートナーシップ」による財源調達です。これは、公立学校での音楽、美術、ダンス、演劇など芸術科目で急速に進んでいます。今回の研究調査でも、「公民パートナーシップ」に注目しています。

「公民パートナーシップ」で設置されたことを示すボード。
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私は以前、学校区による債券発行、証券市場との緊張関係について、2007年の論文「シカゴ市学校区の債券発行の枠組み」(渋谷博史・秋山義則・前田高志編『アメリカの州・地方債』日本経済評論社)を著しました。

同論文の執筆時に、やはり証券市場だけでは財源不足を補完しきれない部分があるという現実を十分知っていましたが、ひとまず考察から捨象しました。証券市場から信用を得られない、自主財源に乏しい学校区はどうしているのか、という問題意識です。

「公民パートナーシップ」は結局、民間寄付金(企業、個人)を得たNPOが政府部門(ここでは公立学校)に様々な形で資金提供して資本改善事業をサポートすることです。


パートナーシップを得て建設した校舎横に設置されたグラウンドの様子。
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皮肉にも、NYの公立学校に公民パートナーシップを進めざるを得ないのは、それだけ教育を取り巻く財政難が深刻であるからです。昨日の地元テレビ番組でも、次年度の公立学校の特殊教育(special education)の予算削減のニュースが報じられました。

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