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サブプライムローンと都市計画 [超大国アメリカの経済社会]

世紀的な経済不況をもたらした2008年リーマンブラザース破綻に象徴されるサブプライムローン問題で、すっかり日本でも知られるようになったアメリカの都市郊外に広がる住宅街。プールやバックヤード付きの高級住宅も多く見かけます。日本でもそうですが、郊外の住宅開発を含めその立地許可を出すのは地方自治体です。アメリカは地方分権社会ですから地方自治体の権限は日本よりも相対的に強いわけですが、それゆえに地方自治体の都市計画の基本構想を盛り込んだ「マスタープラン」は重要な役割を担っています。その地方自治体の「マスタープラン」作りに欠かせない学問領域が、経済学や統計学を基礎とし、その応用学問としての「公共政策」(public policy)です。例えば、アメリカの地方自治体に雇われているCity managerの多くはこの公共政策の専門家です。
1990年代以後アメリカの地方自治体は、上述したマスタープランの重要な柱に「成長管理政策」(growth management policy)と呼ばれる都市計画の考え方を据えています。下のモデル図はその「成長管理政策」に基づく都市計画の基本構造を示したものです。注目ポイントは幾つかありますが、ここでは「cycling(自転車)」と「street car(路面電車)」の領域が相互に連動している点を紹介します。

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アメリカの多くの地方自治体(特に大都市から中堅都市にかけて)では、バスや路面電車に自転車を載せて乗車することができます。アメリカは「クルマ社会」ですが、近年はクリーンで社会的費用(インフラ増大による将来の増税)の増大を抑制する方向で都市計画が進められ、その際にこの成長管理政策に基づく自転車と路面電車の相互リンケージを重視しています。成長(人口や面積、社会的費用など)を管理するという発想は、「クルマ社会」アメリカには信じがたいことですが、実は1960年代前半からカリフォルニア州を中心にこうした抑制型の都市計画の考え方が地方自治体で実践されているのです。また、地元の州立大学(大学院の都市計画学部・公共政策学部)はその都市計画の推進を図る重要なブレイン役を担ってきたことも興味深いです。今日オバマ政権による「グリーン・ニューディール」政策も地方自治体でいわば社会実験的に進められる成長管理政策と整合するものとして注目されています。

サブプライムローン問題は、投資銀行の暴走、金融工学の独り歩きが原因とされています。もちろんそれが直接的な原因ですが、私自身は、それに加えて、住宅バブルの裏で湧きたつ、地方自治体の地方財産税(自主財源)の増収イニシャティブがあったことに注目しています。地方分権国家アメリカの本能ともいうべき、地方自治体による市場を通じた自主財源の獲得が激化し、その結果「成長管理政策」から大きく離脱したことが、サブプライムローン問題をより深刻にさせた原因の一つであるといえます。
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