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アメリカの生涯学習、社会人の学び直し [教育政策と人的資源]

 先月のアメリカ出張ではワシントンやシカゴを訪問したが、シカゴでは、シカゴ市が設置運営するコミュニティカレッジを訪問し、最近のアメリカの成人教育、職業教育、継続教育の現場を見てきた。

シカゴ市立マルコムエックスカレッジのエントランスの様子。
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 アメリカの初等中等教育、高等教育は専門研究分野の一つであるが、今回訪問したコミュニティカレッジは、その両者をカバーする教育機能を果たしている点で、非常に興味深い。アメリカの教育政策や教育改革を見る眼は、一元的ではないが、1990年代以後は、特に経済的自立を促す政策へと全体的に移行してきている。それは、クリントン政権期の1996年福祉改革が断行されたことで、貧困層を含めて自助努力を促す福祉政策が公平であり、健全であるとの認識の高まりであり、その認識が教育政策にも反映されている。

 これらの判断のすべては州による。福祉改革では、州の福祉給付の権限を一層強化し、とにかく州が独自に貧困層の経済的自立(Welfare to Work)を促すプログラムを構築し、運用している。イリノイ州を含む中西部は民主党的なリベラルな政治土壌で知られるが、それでも個々人の自助努力を促す福祉給付の方向に舵取りされている。

 実はコミュニティカレッジは、その自助努力、つまり就労促進を実現する職業教育等を提供する、最も重要な教育機関と化している。今回コミュニティカレッジを訪問、調査した理由はそこにある。


カレッジ内1階のコンピューティング室。学生は宿題をやっている様子。
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 成人教育学部学部長と30分ほどディスカッションをしたが、彼曰く、今後は一層、アメリカ社会では経済のグローバル化に伴い、意欲のある人間と、そうでない人間との差が、そのまま経済格差となって、都市部の貧困など内政問題が先鋭化するであろう、とのことであった。

図書館の様子。
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アメリカのコミュニティカレッジでの教育プログラムは、福祉や貧困という経済問題とのリンケージを一層強めている。そうした貧困対策も視野に入れた都市部のパターンと、例えば北東部州のある富裕地域で視察したような、豊かな財源を最先端IT教育機器の購入に当てた初等中等教育パターンとは、まさに対照的であり、つくづくアメリカの教育は多様であると感じた。

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