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日本の教育改革 「学校図書館の活用」 (その2) [教育政策と人的資源]

いよいよ山形県鶴岡市立朝暘第一小学校に入って「学校図書活用型」のモデル授業を参観するときが来ました。まず、参観する前に校長室で校長、教頭先生より、授業の意義や目的、見所などについてレクチャーを受ける。ちなみに校長室は玄関を入ってすぐ正面にある。通常、「校長室」と言えば奥まったところにある印象だが、ここでは違う。登校した全ての生徒が校長室の前を通過するようになっている。

 実は、朝暘第一小学校は1時間目が始まる前に、生徒が図書館へ行き「本を借りる」という行動から始まる。いうなれば、1時間目が始まる前の、0時間目の授業のような感じである。生徒は登校するとまず本を借りる(触れる)という習慣を身につけている。

朝暘第一小学校の中核的存在である学校図書館。その名も「致道図書館」。
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学校図書館内の様子。生徒は本を借り終え、ほぼ教室に戻ったところ。他の視察者もいます。
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いざ、モデル授業が開始。
今回のモデル授業は1、2年生だったが、この低学年に対しては「読み聞かせ」というのが授業の基本方針。教員(読み聞かせのパートタイムスタッフもいる)が図書館の本を「教材」にして生徒の前で読み聞かせるのである。特に印象に残ったのは、教員だけでなく、生徒にも、「読み聞かせ」をさせている点である。

 さて、その生徒による「読み聞かせ」の様子を黙って見ていると、聞いている側の生徒は、読み手の生徒を「評価」しているのである。特に工夫があるなと思ったのは、聞く側の生徒を何度も入れ替えることによって、読み手の生徒に上手く読むチャンスを何度も与えている点である。人間は誰しも、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目が上達するわけであるが、それを「読み聞かせ」という形で、他者に読んで聞かせる、理解させる、という姿勢を身につけさせようとしている点である。こうした「読み聞かせ授業」は、緊張感漂う「教室」だけではなく、開放感のある「体育館」でも行われている。

 「○○君、もっと大きな声で・・・」という担任の先生の指導を素直に聞いて、弱気な感じの生徒も次第に声が大きくなり、読み方も上手になってくる。3回目、上手く読めた時に、私と目が合った子がいた。なぜ、私と目があったのか。その理由は何となくわかる。その理由とは、上手く読めて自信が沸いて、視察に来ている大人にも自分の能力を高く評価してほしいという思いが高まったからである。

 視察者がウロウロする中で読み聞かせをし、担任の先生に軽く注意されながらも、そこで腐らずに、意欲も燃やしたその子に感動した。恥をかいても、意欲を燃やして、能力を高めることのできる社会経済システムが必要だと、教育の現場から感じ取った。今回の視察の最大の収穫である。今後の研究に活かしたい。

 朝暘第一小学校の「読み聞かせ」教育は、財政力の強いアメリカの学校区でも力を入れている。生徒は大学院マスター修了の図書館専門教員やボランティアの話し方を自然に学んでいるが、それがいわゆる"Show and Tell"の教育手法の効果を高めている。学校図書館の存在意義は日米で大きいと感じた。
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