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シアトルの都市交通 [都市政策・モビリティ研究]

2013年夏、シアトルで開催されたワシントン州交通局主催の公共交通カンファレンス(2012 Public Transportation Conference)に参加しました。そこでは路面電車のさらなる延伸をどう進めるかが最大の議論の一つになっておりました。

まずはシアトル都心部(ダウンタウン)にあるセーフコフィールドのすぐ脇を走る鉄道の様子から。アムトラック等の旅客列車も走りますが、主に貨物列車が走ります。
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元々シアトルは全米でも公共交通の先進都市として知られており、とりわけバス が非常によく発達しています。ただし都市交通システム全体の「広域化」と「大量 輸送化」という交通政策にとって宿命的な課題が残されていました。その問題解 決策として、1990年代から、既存のバスと併用リンクさせるする形で、軽量の路面 電車という新交通システムが整備されたわけです。

ダウンタウンとタコマ国際空港を結ぶ路面電車。
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アメリカはクルマ社会かつヒコーキ社会です。それはシアトルも変わりません。シアトルを含むアメリカ大都市では、 空港からダウンタウンへどのように人間(旅客)を運ぶかが重要な都市政策や都市財政の問題、そして政治問題になります。そしてバス、電車、車(レンタカー)の3者の交通モード間のバランス調整、あるいは選択が重要なイシューとなり、各モード別と複数モード混合などの費用便益 分析(cost-benefit analysis)が経済学者など公共政策論の専門家によって行われます。

その費用便益分析によって導き出された結論が下の写真です。廃線となった貨物鉄道の跡地を利用した路面電車の整備、つまり資本的経費の大幅な圧縮を前提とした路面電車の整備だったのです。大局的に言えば、「貨物から旅客へ」という政策シフトといえます。
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加えて、冒頭で述べたシアトル都市交通の顔ともいうべき「バス」の専用レーンも路面電車のスグ脇に設けることによって、路面電車とのリンケージ(シームレス化)を実現しました。
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シアトルの事例は、あくまでそれ固有の事例です。これが普遍的な回答ではありません。しかし、都市部における廃線の跡地利用の問題は結局、「直線」の空間利用が前提条件になります。したがって交通事業での再利用が州、自治体、交通公社、そして利用者(納税者)全体にとって便益の最大化になるかも しれません。
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