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One Way(一方通行)の「道路文化」 [都市政策・モビリティ研究]

「道路」は、社会資本インフラというよりは、国の「文化」である。人や車の流れをどう把握し、何を優先し、どう変化に対応するか。道路建設の考え方や手法は先進諸国でも大きな違いが見られる。

 

では、日本の道路はどういう「文化」を有しているのか。日本は、ほぼすべての道路が「対面通行」になっている。幹線道路から、住宅街の細い路地にいたるまで、対面通行が基本原則であり、まさに「文化」である。朝夕の通勤ラッシュの混雑時も、対面通行の原則はいっさい揺らがず、そこでは交差点の「信号」という装置がきわめて重要な役割を担っていることに気がつく。さもなくば、日本全国で正面衝突が同時多発的に発生してしまう。信号に依存している(せざるをえない)のが日本の道路文化である。それも対面通行を基本原則としているからである。

 

しかし今後、日本は超高齢社会に突き進む。超高齢社会と向き合うなかで、対面通行という文化を部分的に見直す必要があるのではないだろうか。少なくとも超高齢社会に見合った道路とはどんな姿なのかを、日本は世界に先だって考えていく必要がある。正面衝突のリスクを常に抱え、また交差点では右折車と直進車の衝突のリスクをくぐり抜け、さらに歩行者や自転車とも交差点をシェアしている。道路利用者の全員が、つねに危険と背中合わせである。

 

今こそ、「対面通行」という日本の道路文化を思い切って見直し、「一方通行」(One Way)を部分的に導入すべきではないだろうか。近年の痛ましい交通事故のニュースをみていて、対面通行に内在するリスクを表徴している事例は少なくない。

 

ここで、具体的に「一方通行」のメリットを考えてみる。例えば、次のようなメリットが考えられる。

 

1点目は、正面衝突のリスク軽減、死亡リスクの軽減である。これは上述した通りである。2点目は、歩行者が道路を横断する際、一方の側だけ安全確認をすれば、容易に道路を横断でき、歩行者に安全を与える。現行の対面通行では、「右みて、左みて、また右みて」というように、何度も左右確認を行うことが「文化」になっている。3点目は、一方通行にすれば、もう一方の車線を路駐スペースとして確保できる。これによって高齢者等のピックアップ、ドロップオフの労力負担が軽減される。自宅やデイケア等のすぐ前に車をゆっくりと安全に駐車できるのは、ケアを受ける高齢者も、ケアを提供する側のスタッフも、嬉しいことである。4点目は、中心市街地のモービリティの活性化が期待できる。地方都市に散見される問題の一つに、中心市街地における「駐車場不足問題」があるが、一方通行を導入することで、路上駐車が一気に可能となり、シャッター街と化した商店街の再生が期待される。5点目は、自転車専用レーンを確保でき、これも商店街の活性化、特に学生を含む若年層や自動車を所有しない交通弱者の足と消費を刺激する。

 

もちろん、すべての道路を一方通行にする必要はない。道路幅、交通量、土地利用の状況で判断すべきである。日本の道路は元来一方通行を想定していないから、「無謀だ」という意見があるかもしれない。しかし問題は、日本が今後、未踏の超高齢社会に突入した際の道路のあり方をどうするかである。「従来はこうだったから」では済まされず、事故リスクを軽減する道路づくり、新しい「文化」を創ることである。


 

「一方通行」(One Way)という道路文化が最も浸透している先進国の一つがアメリカ。国土面積、土地利用のあり方、都市計画の手法いずれも、日本とは異なるが、しかし一方通行の運用で享受できるメリットそれ自体は日米でそう大きな相違はない。参考にすべき点は参考にすべきである。


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まずは「ONE WAY」の道路標識。ワシントンDCの閑静な住宅街Dupont Circleにて。アメリカでもっとも頻繁にみる標識の一つがこの「ONE WAY」。

 

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その「ONE WAY」がこの道路。左サイドは住民の路駐スペース。早い者勝ち。

 

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再び、幹線道路に戻る。じつはこの幹線道路も「ONE WAY」。今度は道路の両サイドが路駐スペースに。さらに「自転車専用レーン」も。

 

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平日、朝の通勤時の時間帯。数多くの自転車通勤者が気持ちよさそうに風を切る。自転車と自動車が、同じ方向に走るという安心感。そしてこの交差点には「信号」がない。「STOP」サイン下に「 ALL WAY」とある。4方向すべて一時停止し、順番に交差点に進入するルール。

 

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通勤ラッシュが落ち着いた午前10時過ぎ。今度は、物流トラックの出番。近くのスーパーSafewayに商品を搬入する様子。ONE WAYだからこそ可能な搬入作業。自動車の流れを阻害することなく、トラックを店舗すぐ脇に駐車し、搬入作業ができる。


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